金色の死

先月の谷崎名キャラ図鑑の題材は、「金色の死」の岡村君で、コラムは政治学者の苅部直さんでした。
岡村君は大金持ちで頭も良い美青年で、究極の芸術を追求した結果、それは人体の美だということで、全財産をかけて自分だけのための最高の美のテーマパークを作り上げたあげく、仏像のコスプレをして全身に金粉を塗ったくって窒息死(!)してしまう。
すごいなあ〜と思ったのは、岡村君の、作品によって世間の理解や評価やお金を得たいという考えが完全にゼロなところ。まわりのことなんか考えないで自分の好きなことだけやりたい気持ちを、とことんまでやりきるとこういうことになるんだろうか。現実には、たとえやりたいことをぜんぶやりとおすことができたとしても、それと同時に傑作が生まれるというのはめったにありえないと思うけど、これは小説だから、恐ろしいほどの作品ができたことになっている。
ただアートってやりっぱなしじゃだめで、きゅうくつで面倒くさい話だけど、誰かに評価されて、認知されてはじめてアートの流れの中に入れてもらえるものだから、岡村君の作品はいくら美しくてもこのままじゃアートとは呼ばれ得ない。唯一の目撃者であるこの小説の語り手によって世間に紹介されれば、アウトサイダーアートとして位置づけられたかもしれない。でも岡村君はそんなことは望んでないんだろうな。究極の自己満足だけど、これもひとつの理想だなとはわたしも思った。
(この絵は、岡村君も大好きなレオン・バクストの衣裳を着たニジンスキーのイメージをちょっとだけ借りてます。)