マイペース

わたしは会社員時代に先輩に言われてはじめて自分がマイペースだと知った。
同時に、マイペースという言葉が、どっちかというと否定的なニュアンスで使われているのだということをやっと理解した。26歳くらいのころだった。
あまりにマイペースすぎて、それまでマイペースであることに気づかなかったわけだ。

それまでわたしは、マイペースな人というのは、カラオケで「マイウェイ」を歌う人だ、という漠然としたイメージをもっていた。

よく「マイペースで生きたい」とかいう人もいるし、したがって、マイペースというのは、好ましいこと、さらにいえば、すべての人間が目指すべき到達点ぐらいに考えていたのだった。
だから、自分はまだまだ未熟だし、(マイウェイも歌わないし、)マイペースの境地にはほど遠いと思ってた。

だけど…、マイペースじゃない人なんているんだろうか?
マイペースじゃないペースってありうるのか?
いくら人のペースに合わせたって、合わせた瞬間、それは自分のペースになるのでは?
なんて思ってしまうのは、わたしがマイペースだからなんだろうか?

とりあえずマイペースな人とはわたしのことだと仮定すると、いろんなことがクリアになる。
マイペースという言葉のもともとの意味はけっこう広いし、わたしの昔の解釈もけっしてまちがってはいないと思うけど、実際には、他人のペースに合わせない人、または合わない人、という意味に限定されて使われていることが多い。

ようするに、空気読めないのソフトな言い方だ。そしてそれはたしかにわたしのことだ(泣)。

他人から見て、まわりと比較したときに、「あの人はマイペースである」と、評価を下すために使われる言葉なんだと思う。
まわりと自分との比較という意識が薄いのがマイペースの本質である以上、自力で気がつくことができなかったわけだよなあ…。