青函紀行 その1

昨日の晩、上野発の夜行列車に乗って、北へと旅立った。
寝台特急「あけぼの」は車内販売がないので、食糧をいろいろと買い込んで。
今回の旅の道連れは、編集者のAさん。と言ってもまだ一度も一緒に仕事をしたことがないので、実質ただの友達なんだけど、お互いに敬語を使いあうことで、なにかを守っているという関係(笑)。

今回も、当初は函館に取材に行こうと言ってたのに、青森にも行きたいなんて欲張って、すでに目的がよくわからなくなっている(当然ふたりとも自腹)。
なにしろ月末の金曜の夜だから、Aさんは会社の仕事を無理矢理片付けてきたそうだし、わたしも来週のぶんの〆切までまとめてやっつけてからきたので、すごい開放感だった。

ソロ寝台はひとりずつ個室になっていて、個室の窓から景色が見える。
2階のわたしの個室で、お菓子を食べ食べ、打ち合わせ(←いちおう仕事の)。まるで夜逃げして行くみたいですね~なんていいながら。
わたしが飛行機嫌いなので電車にしてもらったのだが、夜行列車もなかなかいいもんだ。

深夜頃には解散して眠った。でもこの季節なので4時すぎには外が明るくなった。東北の田んぼは今がちょうど田植えの時期で、早朝から農作業をしてる人の姿が見えた。
新緑の木々や、いろんな花(林檎の花もまだ残ってた)を眺めてると飽きなかった。

10時くらいに終点青森駅に着き、2両編成の東北本線に乗って下北半島に向かったが、、、乗換駅の野辺地で1時間も待たなければならないことが判明した。
でもAさんは慣れたもので、じゃあレンタカー借りましょうということになった。
わたしはペーパー・ゴールド免許保持者なので、ここから先はぜんぶおまかせ。もと営業部でならしたAさんの運転で、一路、恐山へ。

Aさんはとても旅慣れているので、肩の力が抜けていて、すごく適当。
わたしは滅多に旅をしたことがないし行動力もないけど、計画性もなくて、やっぱり適当。
経験か行動力か計画性のどれかがあれば上手に旅もできそうだけど、わたしには何もない。しかし今回Aさんは先に帰ることになっていたので、途中からは一人旅になってしまう。
こりゃ無理だと思って、出発前日にあわててiPhoneを買いに走り、最低限のアプリを入れた。(そろそろ新機種が出そうだけど、いま買わなきゃしょうがない)
だったら乗り換えくらいiPhoneで調べとけよって話なんだけど、ほら、まだ使い方がよくわからなかったし、ソフトバンクだから圏外のことが多くて。

海沿いの、ずうっとまっすぐの道路わきには、漁に使う丸いガラス玉がごろごろ転がっていた。菜の花畑の黄色い長方形も目に鮮やかだった。下北名産センターというところに立ち寄って、ホタテの味噌貝焼きというのを食べた。

そこからもう一息。山道を登って行くと、若返りの水というのがあったのできっちり飲み、さらに行くと目の前がぱっと開けて宇曽利湖が見え、同時に硫黄の強烈な匂いに包まれた。「三途の川」を渡って、ようやく霊場恐山に到着。(そういえば、こないだ「asta」さんの挿絵で三途の川の絵を描いたばっかりだ)

新緑の季節のせいかもしれないけれど、意外に明るく、清潔感のあるところだった。
イタコのおばあさんのいる建物をのぞいてみたけど、口寄せして欲しい人もいないので、お寺にお参りしてから、白い火山岩に覆われた「地獄」の岩山を登った。
たくさん小石が積み上げてあって、これみんな誰かが積んだのかと思うと気が遠くなる。
当然ソフトバンクは圏外だったので「恐山なう!」はできなかったけど、まさに岩山にいた時に、ドコモユーザのAさんに仕事の電話がかかってきたのには驚いた。
地獄の奥には白い極楽浜と、エメラルドグリーンの湖、黄色やオレンジ色の小石に黄緑の山。すごくカラフルで、怖いというよりポップな印象で、けっこうのんびりと散策を楽しんだ。

それからお寺の境内にある温泉に入った。粗末だけど清潔な木造の小屋の中にあるヒノキ風呂。湯船があるだけで、洗い場もない。湖と同じ、ちょっと濁った薄緑色の熱ーいお湯。
これはほんとに極楽でございました。いい温泉って長く浸からなくてもスッキリするんだな。
お土産に、ふつうの4倍くらいの太さの恐山線香を買った。

Aさんはゆっくり景色を見ながら運転したがっていたけれど、後ろの車に煽られまくって、まだうす明るいうちに今晩の宿泊地、十和田市についた。
泊まったホテルのすぐ近くに文化会館みたいのがあって、そこによく演劇の公演が来るらしく、出演者(すごい顔ぶれ)の寄せ書きの色紙が、ホテルの壁にたくさん飾られていた。
きっとホテルの社長が演劇好きなのだな。演劇好きに悪い人はいない(バカが多いだけ)。

明日見に行く予定の十和田市現代美術館を下見に行くと、カラフルにライトアップされていた。
夕飯は馬肉料理「吉兆」で、馬刺と馬肉鍋(味噌味のすき焼き風)とバラ焼き(生姜焼き風)。iPhoneで食べログ使って調べた(はじめて役立った)。美味しかったー!
ふたりともグルメには興味ないなんて言ってたのに、しっかりご当地グルメを食べ歩いてる。
日帰り入浴できる温泉を探したけど、目指して行ったところは潰れていたのであきらめた。
1泊3,090円朝食つきという激安ホテルだったので、隣の部屋の学生がうるさかったけど、なんかもうそんなことはどうでもよくなってぐっすり眠った。