昔、母が小学生や中学生だったころの思い出を話してくれたのを不思議な気持ちで聞いていたものだが、自分が大人になってみると、20年くらい前のことでも、そんなに時間がたってしまったとは思えない。
ふだんの生活のことはほとんど忘れてしまっていても、事柄によってはついさっきのことのように思い出せる。
たとえば、中学生のときに水害に襲われて避難したときのこととか、知識としての記憶じゃなく、感覚ごとよびおこすことができるし、もっと現在に近い経験を話すのと同じように話すことができる。
あのときの母も、きっと、遠い昔話としてではなく、リアルな体験として話してくれていたのだろうなあ。
振り返ってみれば、過去のわたしと現在のわたしは1本の線でつながっている。
今のところはまだ、過去の記憶のほうが輝いて見えるということもないし、過去に戻りたいとも思わないのは、たぶんいい傾向なんだと思う。