資料探しとブログ礼賛

きょうは世田谷線に乗って、世田谷区立の図書館を二館、はしごした。
世田谷線は電車も沿線の雰囲気も妙に可愛くて、乗るだけでわくわくする。
終点の三軒茶屋にある富士宮焼きそば屋さんを試したかったが、日曜は定休日らしいのであきらめた。
図書館まで歩く道は、古すぎてかっこよくなってる床屋さん、碁会所、渋いラーメン屋さん、なにやらアバンギャルドな店、素敵な喫茶店など、妙にしっくりなじんでいて、通りすがりに眺めるだけで楽しかった。

資料探しはたいていネットですませてしまうのだけど、(10年早くイラストレーターになってたらどうしてただろうかって思う)今回はかなりマニアックな時代考証が必要だったので、文献にあたるしかなく、でも目当ての本を区立図書館で所蔵していたのはラッキーだった。

わたしは、ブログには自分の食べたものの写真はほぼ載せない。
写真の善し悪しはよくわからないけど、自分の写真が下手なのはわかるから。
まえにフォトグラファーのあきさんとご飯食べに出かけた時に、いっしょに同じお料理を撮影してみたら、まあプロと比べちゃいかんのだが、ほんとに美味しそうさ加減が全然違って、こりゃあすごいわ~と思った。

でもわたしのような仕事をしてると、思いがけないものを描くことがよくあって、資料的には、プロの写真よりも素人の写真のほうが価値があったりする。
匿名の誰かが食べたものの羅列のブログって、あんまり面白くないことが多いし、面白くないことって一種の犯罪じゃないかとも思うのだけど、素人写真にたくさん写り込んでいるよけいなものが、じつはお宝の山なのだ。

たとえば小説の挿絵で、○○という実在の店でケーキを買って食べる場面を描く時、ケーキそのものの写真は公式サイトやなにかでわりと簡単にみつかるんだけど、その箱のサイズやリボンの色とかまではなかなかわからないので、どっかのOLが携帯で撮ったピンぼけ写真に箱が写りこんでるのを発見したりすると、もう、すべてのOLのブログはわたしのために書かれてるんじゃないかとさえ思う。

犬猫を描くときは、中途半端なポーズの写真が多い犬猫愛好家サイトも役に立つ。
あんまりフォトジェニックに決まってる写真は、かえって絵にはなりにくいので。
あと、すごく助かるのはバイク乗りの人たちのサイトで、彼らは山奥の秘境でしか食べられないグルメの食べ歩きをしてたりするし、総じて写真の枚数が多く、まわりの風景やら、よけいな情報も盛りだくさんだ。
でもねえ、バイクじゃなくても、どっか旅行とか行ったり、なんか食べたりしたら、すべての人に、すべての写真をネット上にあげてもらいたいものです。

それが楽しかろうがつまらなかろうが、美味しかろうがまずかろうが、遠出しなくても、通勤電車や、近所の公園や、自宅の庭とかの写真もぜひ欲しい。
文字がないと検索にあたらないから、簡単な文も添えて。そう、ブログにして。
○○という所に○年前に行ったら、こんな花が咲いてて、人々はこんな服装だった、っていうような、一見つまらないことが大きな意味を持つことだってあるから。

絵に描く時はかなりデフォルメするし、わたしの絵はリアルじゃないし、写真そのままには絶対になりようがないので、著作権的にはOKだと思う。
というか、むしろ、資料調べてるのをわかってもらえてなさそうだ。。。
それでもやっぱりちゃんと調べておかないと、自信もって描けないからねえ。

最近、イラストの人物の身体のフォルムをトレースしてたのが発覚したせいで、そのキャラクター商品が発売中止になっちゃったっていうニュースがあった。
わたしなんか「トレース」って発想自体がないから信じられないけど、アニメ系のイラストだとそういうことが起こるのかもねえ。

しかし、そういうことに、マニアの人ってほんと敏感だよな。。。
でも、アンリ・ルソーなんかも、写真の構図そのまま使っちゃったりしてたし、ヘンリー・ダーガーも、切り抜きの絵を何度もコピーしてコラージュしてた。
一枚の絵を構成するときに一番大事な肝は、細部の形ではないということだ。わたしには、再構成して別の作品になってたように見えたけどなあ。

アニメ絵は近いようで遠い世界なので、いろんな事情とかよくわかんないけど。
ただ商品だから、言いがかりつけられてクライアントの腰が引けてしまったのかな。
でもあれだけできるなら、トレースなんかしなくてもちゃんと描けそうなのに。
ていうかトレースなんかしたらかえって描きにくい気がするが…。