日本画入門

学生時代のサークル仲間のSちゃんは、その当時から日本画を習っていて、プロではないけど、今は教室で先生の代わりに教えたりもしている腕前。(ちなみにSちゃんのおばあさまは伊東深水のモデルをしたことがあるとか。ふおお)

きょうはSちゃんの自宅アトリエにお邪魔して、日本画の技法を教えてもらった。
日本画を習うのは、道具とかお月謝とか、なにかとお金がかかりそうだけど、友達にちょこっとさわりの部分だけ教えてもらうくらいなら気楽にできるかなあと。
ちょうど昨日、アクリル画の描き方を変えようと決意したところでもあるし。

事前に「箔」だけは自前で用意してねといわれて渋谷のウエマツに買いに行ったのだが、金箔ってものすごい高いのね!…まあそりゃそうか。当然、一番安いアルミ箔を買った。
アルミ箔といっても、お料理に使うのとは違って薄いので、けっこうな値段したけど。
でも日本画の絵の具売り場に並んだ、瓶入りの岩絵具の色とりどりの粉末、あれを実際に使ってみることができるかと思うととってもワクワクした。

Sちゃんが、前もってニカワを湯煎で溶かしておいてくれたので、最初に、2種類の和紙に墨汁&紺色の絵具でグラデーション状に地塗りをしてから、乾かして、片方にはドーサを使ってアルミ箔を貼り、もう片方には胡粉を塗った。

紺色の絵具は固い棒状で、墨をするみたいに根気よく水に溶かさないと使えない。胡粉は貝殻の粉末で、おひな様の顔の白。すり鉢で砕いて、ニカワで練って、水に溶く。使いたい絵具はいちいち擦ったり捏ねたりしなきゃいけなくて、とにかく時間がかかる。
箔は手で直接は触れないので、一旦、ロウをひいた「あかし紙」にくっつけてから貼る。薄くて鼻息でもすぐ破けるし、皺が寄らないように貼るにはかなり神経を使う。

金閣寺の(趣味の善し悪しはともかく)あの箔の貼りっぷりはすごいんだな~と思った。で、乾くのを待って、手でグチャグチャに揉んだり折り畳んだり表面をこすったりして、面白い模様つきの紙ができあがった。和紙ってこんなにしても破れないんだねえ。
それからもう一度水を含ませた刷毛を使って紙の皺をのばし、でんぷん糊を水に溶かしたのを塗って、裏にもう一枚薄い和紙を貼って補強した。

これでやっと下地づくり完成。きょうはここまで。絵を描くとこまでいかなかったけど。
Sちゃんは教え方がうまくて、いろいろ聞くとちゃんと的確に答えてくれるので、乾きを待つ間にもいろんなこと教えてもらって、たくさん頭を使って、けっこう疲れた。
とにかく悠長で、現代とは思えないやり方だけど、同時にすごく合理的な理由もあって、(ニカワの水溶液は腐りやすいから固形で保管して使うたびに溶かすとか)道具や手順のひとつひとつに先人の試行錯誤や知恵の積み重ねが感じられた。

わたしはずっと自己流で絵を描いてきたので、なにかすごく圧倒されるものがあった。
それに、絵の具って、いつも何気なくチューブから出してじゃんじゃん使っているけど、本来こうやって大事に大事に研究を重ねて作ったり使ったりする、それ自体宝物なのだ。
金箔だけでなく、こんな宝物を使ったら、中途半端なものは描けないだろう。
手軽なアクリル絵の具も、すごい技術の塊で、やっぱり宝物に違いないなあ、と思った。