黒くて楕円形の何か

基本的にわたしは好きな時間に寝て好きな時間に起きる生活で、眠るときは眠いから寝るので、暑いから眠れないということはありえない。
常に熟睡しているはずなのに、きょうはなぜだかふっと目が覚めた。

ふくらはぎのあたりになんだかモシャモシャした感触があって、何度か手で払っても消えないので、目を開けてよくみると、夜中で暗かったけど、足の上に「3cmくらいの黒くて楕円形の何か」が貼り付いているのが見えた。

あまりにびっくりして声も出せずに、跳ね起きたらそいつは床の上に落ちた。
わたしはベッドの下にあった古新聞をつかみ、深呼吸して自分を落ちつかせながら、まーね、一発でしとめて、電気をつけてみるとやっぱり、ゴキブリが潰れてた。

速攻で新聞でぐるぐる巻きにして、さらにレジ袋7重ぐらいにして入れて捨てて、床も洗剤でゴシゴシ拭いて、シャワーを浴びて着替えたけれど、「生足の上をゴキブリが這っていた」「そのゴキブリを素手で払ってしまった」というショックが大きすぎて、すっかり眠気も覚めちまったよ。。。

ここの家に越してきてから5年くらい、室内では一度もゴキブリ見てなかったのに。部屋じゅうに徹底的に駆除剤をしかけていて、半年に一度は必ず交換してるのに。
さては夕方に花の水やりをしたときに開けた窓から入ってきたか。

だけど、ゴキブリもゴキブリだよ。
ゴキブリならゴキブリらしく、シンクの下とか冷蔵庫の裏とかにいればいいものを、なぜに、なぜに、わたしの生足の上なんかを通り道にするかなあ。

わたしだって、蒸し暑い夏の夜に、一人で家に帰る道の途中なんかで、暗いアスファルトの上をゴキブリがとぼとぼと歩いてるのを見かけたりすると、ああ生きてくって大変だよね、なんてちょっとシンパシーなんか感じたりしてさ、自分の家の中にさえいなきゃ可愛いと言ってもいいとさえ思うのだけど、いやさすがにそれは言いすぎだけど、あいつがこの世に存在してることは認めるの。
ただただ、わたしのテリトリーに立ち入るのだけはもう勘弁していただきたい。