バンドごっこ

突然、大鹿さんから「バンドやりませんか」というメールが来たのが9月のはじめだった。
9月中旬、大鹿さんの個展会場のアートトレイスギャラリーにとりあえず3人、集まった。

本業がパイプオルガン奏者の原田さん以外、バンドらしい楽器なんてできないので、おもちゃのピアノに、ピアニカ、マラカスや鈴などのこまごまとした楽器をかき集めて、適当にうちならしてみたり、ワーワー大声を出したり、口笛をふいてみたりした。
音の反響がすごく良いコンクリートの建物だったので、それだけですごく楽しかった。

バンド(?)の名前は、大鹿さんのワークショップの名前「星舟庭」に決まり、何回か練習してから、個展の最終日に、数人のこころ優しいお客さんの前で演奏をした。

ところがこれがひどい出来だった!、、、とわたしと大鹿さんは思った。
所詮ぐっちゃぐちゃの即興なので、お客さんには出来の善し悪しなどわかるはずもなく、プロの演奏家の原田さんによれば、いつもと同じだった、ということだったが、、、
何回かやってるうちに飽きて、最初の新鮮さやエモーションが無くなってしまった。

ようするに、なんか楽しくなかったな~、おっかしいな~、ということだ。
自由に遊び続けることは本当に難しくて、飽きないためには多少のルールが必要だった。
その場かぎりのバンドごっこのつもりで、まさか続けるとは思ってなかったけど。。。
しかしこの時点でなんと次のライブ(虫フェスにゲスト出演)が決まっていたのだった!

虫フェスは昆虫を捕まえたり、食べたり、図案を作ったり、昆虫好きな人たちのお祭り。
わたしたちはそれほど虫好きではないけど、大鹿さんの教え子の方が運営に入っていた。
それで虫をテーマに、30分くらいで、と考えたら、少しだけまとまりがでてきた。

10月は予定が合わずに一度も練習できなかったけど、11月に入ってからは毎日練習した。
こんどは、不思議なことに、練習するたびに演奏することが楽しくなっていった。

そして11/6に、100人以上の虫ファンの前で、変てこな演奏を披露したわけだったが、さすがにゲテモノ食い(失礼)の方たちは好奇心が旺盛なのか、心が広くて優しかった!
手拍子がおきたのには驚いた。アンケートも好評だった(初めて見るものだった、とか)
そりゃあ、あんなもの見たことあるわけがない。

あとでこのときのビデオをみたら、たしかに案外悪くなかった。良くもないけど。
とにかくほんとに今まで見たことがないカオスな何かが映っていた。

音楽って、たくさん練習が必要で、選ばれた人だけができるもののような気がしていた。
それに大人になってから楽器を上手に演奏できるようになるのはものすごく大変だろう。

わたしはなんでも本気でやりたいタチで、本気じゃないならやらない、となってしまう。でも、うまく演奏することを絶対に目指さなくてはいけないわけではないのだ。
ただ息を合わせて遊ぶ、ということだったら、いつでもできるんだな、と思った。
小学校のときにみんなで合奏したように、大人になっても合奏することができる。それに無理矢理学校でやらされるよりも、今、好きなようにやったほうがずっと楽しい。
もちろんたくさん練習して、うまくなったら、きっと、もっとレベルの高いところで、演奏者同士、共鳴し合ったりして、もっともっと楽しくできるだろう。でも、へたくそはへたくそなりに、息をあわせる面白さを味わうことができる。
ルールがほぼない(というか知らない)分、素人の方が難しいこともあるかもしれない。

絵描きやってると、人と息を合わせて何かするということが少ないので新鮮だった。(いろんな人とお仕事するけど、持ち場は決まってるし、作業自体はいつも一人だから)
それに誰とやってもいいのではなく、この3人だからこその磁場が生じているのだろう。

で、その後はというと、、、
アルバム作ろうとか、海外ツアーに行こうとか言ってます。。。むちゃくちゃだw
なんとなくここまで調子良く(?)きたら、欲が広がってしまったようで。。。
面白いことはもっと面白くやりたくなって当然だし、やるなら誰かに聴いてほしい。
人前でやるとなると、見た目とか、動きかたとかも、もっと考えないといけない。
子供相手にならず大人が楽しめて、アートっぽくならず、お笑いに走らず、、、と、やっぱりモノつくりに関わる人間なので、じつはいろんな美意識があったりする。
お手本がない独自の道なので、、、どうなっていくのかわかんないけど、こんなバンドがひとつくらい存在してもいいんじゃないかなとは思う。