前世

このごろは友人Kと長電話してはこそこそ悪だくみしているのだ。
それで、子どものころ読んだ本や、描いた絵や、好きなもの嫌いなもの、その他ひっかかる点についてあれこれ検証している。

友人Kは、以前に、前世がみえる力をもった人に会ったことがあって、「あなたの前世は、17世紀のインドの僧侶で、手先が器用だったので、カトマンズの王宮に招かれて、宝石職人をしていた」と言われたそうだ。ちなみに友人Kの師匠K先生は「ムガール帝国の兵隊」だったそうな。

もちろん確かめることは不可能だけど、やけに具体的な霊視である。
前世がビジュアルで見えたとしても、その兵隊がどこの国の兵隊なのか、言葉に変換するのは難しいと思われるので、たぶん言葉が浮かぶのだろう。
でも、脈絡もなく、ふとなにかが思い浮かんでしまうのは、絵描きも芝居屋もおなじだ。
友人Kは、たぶんあれは霊視というより「配役」に近いんじゃないかという。で、配役だったら自分にも出来るという。そりゃそうだ。

そこで、じゃあわたしの前世はなんだったのかと聞いてみたら、「タヒチで、くだものを運んだり、ゴーギャンのモデルになって絵にヒントを与えた人」だそうな。
…それってさー、めちゃくちゃいい役じゃん。ほんとに合ってんの~???
わたしは絵的にはどっちかというとゴーギャンよりゴッホのほうが好きなのだが。

ゴッホの「ゴッホの椅子」「ゴーギャンの椅子」は、とても好きというか、気になる絵だ。
でも、ゴッホはあきらかに変だけど、ゴーギャンも同じくらい変な人だったんじゃないかな。一人が耳を切って、もう一人が何ともないわけはないので、ゴーギャンもさぞかし傷ついたろう。
ゴーギャンの『われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか』という絵は、いちどこの目で見てみたいなと思う。

ま、よくわかんないけど、「くだものを運ぶ人」ってのは、そうかもな、って気がした。