青函紀行 その2

十和田市現代美術館は9時オープン。早起きして(早くもないか)朝イチで入館。
常設展も、企画展「草間彌生 十和田でうたう」もオブジェ中心で、明るくて大胆な雰囲気。
いい天気だったので、ガラス越しに見える青空と、美術館の空間がさわやかで気持ちよかった。

ロン・ミュエク「スタンディング・ウーマン」、ハンス・オプ・デ・ピーク「ロケーション(5)」、それに栗林隆「ザンプランド」も面白かったなー。
オノ・ヨーコのインスタレーションは明らかに恐山をイメージしてた。
美術館自体はそんなに広くないけど、美術館前の広場にもたくさん大きなオブジェがあって、草間彌生のでっかいかぼちゃのてっぺんによじ上ってる子どもがいた。すごい身体能力。。。
大人も子どもも理屈抜きで楽しめる素敵な美術館で、わたしもとっても楽しかった。企画展には周辺の商店街も協力していて、赤い水玉が窓にいっぱい貼られてたのも可愛かった。

もともと車を使う予定ではなかったので、このあと電車で函館に向かうつもりだった。
しかしここは十和田市。近くに奥入瀬渓流と十和田湖がある。

じつはわたしは恐山や奥入瀬渓流が青森にあるということすら知らなかったのだけど、同行者がいると、視野が広がって、思いがけない場所に行くことができてすばらしい。
奥入瀬渓流は薄緑の日本画の世界。岩絵の具の色彩だった。東山魁夷の絵の中にいるみたい。歩いたのはほんの一部だったけど、マイナスイオンをいっぱい吸い込んだ。滝も素敵で、思わず滝壺まで走り寄っちゃったりして、運動神経ないのに、危険。。。(スパイクつきのトレッキングシューズを履いていったのは本当に良かった。水にも強いし)
でも、水がゆったり流れているところと木々と苔々の、ふしぎな緑色がいちばん心に残った。

十和田湖はカルデラ湖で、微生物が少なく、透明度が高い(昨日の宇曽利湖もカルデラだった)。湖の底が、けっこう遠くまで見えた。ここの水が、水門を通って奥入瀬に流れていく。
湖畔を少し散歩してから、また車に乗り、湖の周りをぐるりと回って、八甲田ゴールドライン経由で再び青森へ。今日は一日中緑のトンネルの中を走ってた。

夕方、4時半ころに青森市内について、まだちょっと時間があったので、三内丸山遺跡へ。
立派なつくりの入り口の建物をくぐると、広々とした公園に復元された竪穴式住居や謎の柱など。またわたしは走りまわって柱の跡やらお墓やら見物し、Aさんはゆったりあたりを見回していた。ここは30分もあれば十分楽しめる。同じ敷地内の青森県立美術館は5時閉館なのでまた今度。

無事に青森駅に到着して、レンタカーを返して、特急スーパー白鳥で函館へ。
疲れて眠くなってしまったけど、青函トンネルに入るまでは起きていたかった。でも思わせぶりな短いトンネルがいくつもあって、気がついたら眠ってた。
北海道の地上に出たころに目が覚めた。夜7時半過ぎても、緯度が高いのでまだうす明るい。
木古内という駅に停車した時は、電車の音も止み、外もしんとして、乗客もみんな押し黙り、異様に静かで、時間まで止まってしまったようで、思わずひそひそ声になってしまった。
やがて街の灯が海に沿って見えてきて、8時過ぎに函館に着いた。

函館は両親の出身地だけど、駅に来るのは久しぶりだったので、新しくなっていて驚いた。
駅前から市電に乗り、函館山方面へ。宝来町(元々はこのあたりが本籍地だった)で降りた。
よく父が懐かしがっていた「小いけ」のカレーを食べてみたかった。
昔とは経営が変わって(そりゃ何十年も経ってるし)味も変わってしまったという話だけど、食べログでの評価は高いので「元祖小いけ」(すぐ隣に「本家小いけ」もある)でカツカレー。
すごく美味しかったけどな。安いし。冷凍カレーを持ち帰りできるというので、実家に送った。

それからロープウェーで函館山に登り、函館の夜景を見た。夜景は子どものとき以来。
展望台のガラス越しより、外に出て生で見るのが何十倍もきれいで、ずっと眺めていたかった。
それにお月さまが、ほぼ真ん丸の月が、異様に大きく、オレンジ色に光って禍々しいほどで、それが海に映って、光の道がくっきりとこちらに向かってきていた。なんなんだあれは。。。

またロープウェーで山を降り、ぶらぶらとベイエリアを歩いて、ホテルへ。
「ラビスタ函館ベイ」はなかなかこじゃれたホテルで、夜景を見ながら赤湯の温泉に浸かれる。お風呂からみたお月さまは、もうふつうの大きさに戻って、光の道もおだやかに拡散していた。