お出かけ」カテゴリーアーカイブ

アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国

アートトレイスギャラリーの工藤春香さんの個展に行く。
優生保護法の歴史を、生きることが出来なかった子供の目線で表現していた。
社会的なテーマをアートで表現することに、わたし個人は興味がない。
でも、訴えたい強いテーマがあるときに、力のある作家がアートという手段で伝えると、文章なんかよりずっとすんなりと心に届く場合がある。とても有効なやり方なのだなと素直に思った。印象の強い展示だった。
 
それから東京ステーションギャラリー「アドルフ・ヴェルフリ展」へ。
電車の宙吊り広告を見て、これは見逃してはならんと思った。
アール・ブリュット(アウトサイダー・アート)の作家。
わたしは他のどの様式よりもアール・ブリュットが一番好きかもしれない。
そまつな大判の新聞用紙にびっしりと描き込まれた、おびただしい数の絵。
この集中力、あるいは執着力は、、、とても真似などできない。
ただ、画材なんてなんでもいいんだよな〜、と思う。
ついつい、耐久性とか考えてしまうけど(それはとても大切なことではあるが…)。
絵に力があれば、そしてしかるべき人に発見してもらえる運があれば、画材の条件が悪くてもどうにかして保存してもらえる。
絵がダメなら、耐久性なんかあってもしかたが無い。
 
そのあとアートラボに行き、村田いづ実さんのダンス・パフォーマンス(菅間圭子さんの演奏とコラボ)を見る。
去年亡くなられたお母様の思い出の品々に囲まれての「エア茶道」。とても胸にせまった。

N・S・ハルシャ展 チャーミングな旅

渋谷のヒカリエでアートラボ・トーキョー/サテライトアートラボの展示中だったのでちょっと顔を出す。
 
それから六本木に移動、森美術館の「N・S・ハルシャ展 チャーミングな旅」。
森美術館のアジアのアーティストのシリーズはいつもとてもエキサイティングだ。
ハルシャは南インドの画家。
1969年生まれというから年代が近く、ポップな感覚はなんとなく通じるものがある。
インドのこと、よく知らないけど、インドらしい宇宙観というべきなのか、死生観というべきなのか、全体的にとてもおおらかで、雄大な感じがした。
人口の多い国らしく、ものすごくたくさんの人物が画面いっぱいに並べられた絵は、素朴でもあり、現代的でもあり、可愛らしさもある。
とくに、初期の、人がずらーっと並んで寝ている絵が、のんきな感じで好きだったな。
うずまく宇宙の巨大な作品は、とにかく圧巻。木枠を使わず、帆のようにロープで引っぱる形で展示されていた。
ポップな明るさと、暗く底知れない恐ろしさが両方あり、どちらもとても魅力的だった。
絵だけにこだわらず、インスタレーションなどいろんな表現を使っていて、自由で力強い展示だった。

 

草間彌生 わが永遠の魂

イナジンさんと待ち合わせてランチしてから、国立新美術館の草間彌生展へ。
まずチケット買うのに40分待ち。天気がよすぎて、暑い。
もうすぐ会期が終わりだったし、同時開催のミュシャ展も大にぎわいで、よけいに行列が長くなっていた(ミュシャ展はあきらめた)。
現代美術に興味なさそうな年配の人が多くてびっくり。ミュシャが奥様に受けが良いせいもあるだろうけど、草間彌生がようやくその層に認知されたのかな。
チケットを買ってから入場までにまた行列。
(行列したせいでイナジンさんといろいろ話せて良かったけど)
一番大きな部屋にずらりと並べられたS150号の絵が圧巻だった。
何年か前に埼玉県美でみた展示の時は100号の絵が中心だったが、あれからますますパワーアップしていたように思う。
あれだけ長年制作していて、一番最近の絵が一番良いって、とてもすごいことだ。
さいご、お土産売り場でまた40分待ちの看板が出ていた(彌生ちゃん人形がちょっと可愛いなと思ったけど、さすがにパス)。
見終わったら午後3時頃。この時間帯が一番すいているといううわさを聞いていたけど、ぜんぜんそんなことはなく、まだチケット待ちの行列ができていた。
 
展示の最後にお客さん参加型のインスタレーションがあって、白い小部屋の好きなところにカラフルな丸いシールを貼るというものだったのだけど、知らないうちに、このシールの固まりがカーディガンのお尻のところにベッタリとくっついていた。
イナジンさんと別れた後も、ずっと気づかないままうろうろ歩き回り、地下鉄に乗ったり、世界堂に行ったり、さらにギャラリーハウスマヤの都築まゆ美さんの個展(超すてき!)にお邪魔したところで、都築さんに言われてやっと気がついた。
でもなんか作品の一部になったみたいで面白かったからそのままにしていたら、家につくころには消えて無くなっていた。

世界遺産 ラスコー展

上野の国立科学博物館のラスコー展を見に行った(フランスからまさか洞窟を運んでくるわけにはいかないので、精巧に再現されたレプリカの展示)。
ラスコーの洞窟壁画を描いたのはクロマニヨン人。クロマニヨン人はホモ・サピエンスなので現代人の直接の祖先だそうだ。
クロマニヨン人の骨から再現した人形がすごくよくできていて、皮膚とか手足の体毛とかが生々しくて、見入ってしまった。思いのほか体格が良くて女性もけっこう背が高かった。こうして見るとほんとうに同じ人間だったんだなーと実感できた。
彼らは石器とか粗末な道具しか持っていなかったけど、現代人と同じような身体や知性や感情や感覚を持って生きていたのだ。
そして、大きな壁があればつい絵を描きたくなってしまうのは、彼らもわたしも同じ。これって本能なんだろうか?笑
ラスコーの洞窟は住居として使われていたわけではなく、模型によれば、かなりの奥行きがあり、曲がりくねった空間の広い範囲にわたってたくさんの絵が描かれていた。
石を削ってつくったランプの光を頼りに、こんな洞窟の奥まで入っていくのはどんなに恐ろしいことだっただろう。

絵の具は、植物の汁とか墨を使ってたのかな?と思っていたら、実際は岩石を砕いた顔料だった。どうりで、長い時間に耐えて残ったわけだ。
色も黒〜茶色〜黄土色、紫色とそろっていた。洞窟に描いてあるのは牛や馬などの動物がほとんどだから、これだけ色があれば充分なのだった(花や木を描くには足りないけど)。
その絵の具をぼかしたり重ねたりいろんな技法で使いこなしていた。動物の足の形など、とてもよく観察されて、写実的に描かれていた。
今はかすれてしまっているけど、描かれたばかりのときはさぞかし荘厳な空間だっただろう。
でも、凄いと言えば凄いけど、同じ人間と思えば当たり前なのかもな、とも思えた。

国立科学博物館に行ったのは初めてだったので、常設展も見た。
これが、ラスコー展以上に楽しかったかも。。。
いろんな動物の標本やら剥製やら模型やら化石やら、いろんな道具や機械やら、とにかくサイエンスっぽいものが、これでもかこれでもかと集められていた。情報量が多すぎて、いちいち説明文を読んでいたらとても見きれないほど。それぞれの分野に興味がある人だったら一つのコーナーだけでも1日つぶせるんだろうな。かっこいいなー。
なのでざっと駆け足で見ただけだけど、印象に残ったのは、くじらかなんかの巨大な腸に寄生虫がものすごい大量に群がってる標本とか、人類の祖先の「ルーシー」の人形(小さかった!)とか。
あと、ティラノサウルスのしゃがんだ形の化石なんてマニアックすぎて、そりゃ面白いけど、やっぱりティラノは立ち上がってガオーってしてる姿が見たいよなと思った。笑
ぜひまた行きたい。

韓国アート道中・7日目 帰国の日

朝から鍾路3街のお餅屋さんに行きました。お土産にカラフルなお餅を買いたかったけど賞味期限がその日中だと言われ、明日まで持ちそうな地味目なお餅をいくつか買いました。
それからフォークアートの美術館に行ったら、どうやら移転していたらしく、張り紙に書かれた地図がハングル表記で読めなかったのであきらめて、荷物をまとめてギャラリーに行きました。

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副社長さんがお知り合いのお店のおしゃれなサンドイッチとサラダとモンブランパンを用意してくださっていました。(モンブランパンは貰って帰って成田空港で食べました。甘くて美味しくてお腹がすいてたので助かりました)

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腹ごなしに散歩に出て、ギャラリーの近所の青瓦台(大統領官邸)を見物したり、手持ちの現金がなくなったので銀行で2千円分だけ両替したり。今回、空港と、明洞と、銀行の三カ所で両替しましたが、「地球の歩き方」に載ってた通り、明洞が一番レートが良かったです(空港はダメ)。

ギャラリーに戻ると、5月のアートフェアで絵(沼の主)を買っていただいたお客様がおいでくださってとても嬉しかったです。一緒に写真をとったり、ハガキにサインを書いたりしました。
空港行きのバス停はギャラリーのすぐ近くでした。副社長さんとそのお友達がバス停まで見送りにきてくださいました。

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なんだか本当にこの一週間、みなさんのおかげで、夢みたいに幸せでした。
Zeinxenoのみなさん、アートラボのみなさんとのつながりがなければ、こんな経験をすることはできませんでした。わたしは本当にラッキーだなあと思います。
とくに李奈珍さんには何から何まで面倒をみていただきました(ご自身も個展のあとでお疲れだったのに)。こんなにたくさん話せたのは初めてで、とても楽しく、いい時間を過ごせました。
菅間さんが、李奈珍さんのことを「アートラボに舞い降りた天使」だと言っていました。わたしもその通りだと思います。
ぜひ、また来たいなあと思いました。

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空港には時間に余裕をもって着いたけど、出国手続き後にのんきにfacebookを更新してたら、時間が足りなくなって、大慌てで甥っ子にあげる飛行機のおもちゃを買いました。おもちゃを売ってるお店がなかなか見当たらなくて、結局買ったのは色は大韓航空っぽいけどよく見るとなんか違う、中国製のバッタもんでした笑。
慌ててたせいで、ついでに高いチャンジャを買わされました(ふだんは絶対こんなことないんだけど、、、)。

そんなこんなで18:50発の飛行機に乗り込み、空からソウルの夜景を眺めました。
機内食はカレーライスにパンにフルーツ、そしてコチュジャン。。。このコチュジャンは、カレーにかけるためのものなのでしょうか?

韓国アート道中・6日目 個展はじまり

韓屋のゲストハウスは、昨日まで泊まっていたホテルよりさらに狭いけど、いい雰囲気。韓国の家の障子は、日本と貼る側が裏表逆で、家の外側に桟が見えるようになっていて面白かったです。
ただ、南京錠とネジで閉めるガラス戸の建て付けが悪く、部屋に蚊が入ってきて困りました(夜中に必死で仕留めました)。
とはいえオンドル+お布団は暖かかったし、バスルームは共同だったけどとくに問題なく、ほかにフランスから来たカップルが2組泊まっていて、朝食のときに英語で適当におしゃべりしたり、中庭でのんびりしたり、なんかいい感じでした。
フランス人に、韓国人と日本人は言葉が通じないのか?と聞かれたのにはびっくりしました。そっかー、西洋人にはそんなふうに思われてるんだなー。。。

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朝食後、少し曇っていたけど、ソウルタワーに行ってみようと急に思い立ち、麓まで行ったら月曜日はロープウェイ乗り場行きのエレベーターがお休みで、乗り場まで階段で登りました。
ロープウェイで南山の上に行くとやっぱり霧が出ていて、少し迷いましたがせっかくここまできたので、タワーにも登りました。あまり遠くまでは見えなかったけど、雲の中に街が浮かんでいるみたいで、とくに漢江にかかる橋が光に包まれてぼうっとしているのがきれいでした。
驚いたのはトイレ。一面ガラス張りで、ソウルの街を見下ろしながらパンツ下ろすというめずらしい体験をしましたよ。

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昼頃ギャラリーで李奈珍さんと小さい娘さんと会い、近所の通仁市場でカリっとしたトッポッキ(辛いのと醤油味の)と、何かお肉っぽいのをエゴマの葉っぱで巻いたもの(おまけにつけてくれた)と、ピンデトック(緑豆のチヂミ)を食べました。町中で気軽に食べられる軽食がいろいろあるのはうらやましいです。一人だったら店内で食べる度胸はないですが。。。
それからタクシーで大きなスーパーマーケットに行き、お土産のお買い物。目新しい物がたくさんあって、いろいろ食べてみたかったけど、パッケージをみても味の想像ができないし、荷物が多くなりすぎても困るので、ちょこっとずつ、いろんなものを買い込みました。

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ギャラリーに戻ると、アートフェアが昨日で終わったばかりでお疲れのところ、社長さんがフェアから持ち帰った作品や、「YIAF※」に出展していて戻ってきた作品などをディスプレイしてくださっていました。輸送の関係で小さな作品ばかりでしたが、数が思ったより多かったので、二段に並べたり、なかなか賑やかな展示になりました。
ギャラリーの入り口横には大きな横断幕を飾っていただきました。すごーい(≧∇≦)
個展は、イラストの展示も合わせるとこれで7回目になりますが、今までは、絵に自信がないのでインスタレーションとかオブジェとか作って力技でごまかしてる部分がありました。今回はオブジェを送れなかったので、初めて、絵だけの展示になり、それでもどうにか形になったので、少し自信になりました。

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わたしもタイトルのシールを貼ったり、グッズを並べたりしました。グッズ用に用意していただいたテーブルは、副社長さんのご主人(大韓航空のパイロットで、ベストセラーの本も出版されているそう。一冊いただきました)が趣味で作ったものだそうで、おしゃれな上に使いやすかったです。

※YIAF(麗水国際アートフェスティバル。帰国してから検索したところ、9/9〜29まで行われた公募展らしい)にも出展させていただいたそうです。
おみやげに、分厚くて見応えのある展覧会カタログをいただきました。こういう本に載ってると、なんだか元の絵より格調高く見えます。笑
テーマは記憶・調和・情熱で、わたしの絵は情熱のページに載ってました。情熱とな。。。
絵画中心だけど書道とか工芸とかもあって、たくさんの韓国作家の中にちょろちょろっと外国人もまじっていました。たぶんここに入れてもらえたのは外人枠のおかげかなー。

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夕方、郵便局に行き、李奈珍さんは個展の作品を、わたしは爆買いしたキャンバスやお土産を、それぞれ日本にEMSで送りました。量が多かったので、郵便局が閉まる間際に慌てて梱包したりラベルを書いたりと、大変でした。でも郵便局の人たちは親切だったし、日本から韓国に送るより料金がずっと安くて、クレジットカードも使えて、複数口割引もできるというので驚きました。
(しかも19日の朝には自宅に届きました。早っ!)

夕食はまたギャラリーでパーティをしていただき、社長さんが次々とチヂミを焼いてくださって、社長さんのお友達のお医者さんと、副社長さんのご主人もみえて、にぎやかに中華料理を食べました。マッコリも美味しかったです。
なんだかストッパーがはずれてしまって、毎日美味しい物を食べまくり、日に日に明らかにムクムクとむくんでいて、帰国後に体重計に乗るのが怖いです。

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韓国アート道中・5日目 美術館・ギャラリーめぐり

ここにきてやっと英語が口から出てくるようになってきて、日本語と混ぜて、なんとなく街の人と意思疎通できるようになってきました。韓国語のほうは、日本で展示の準備をしながらYouTubeで繰り返し韓国語講座を聴いていたけど、付け焼き刃ではやっぱりとっさに出ません。

7年前に感動したトーストがまた食べたくて、朝イチで東大門に行きました。
お店の名前は忘れていたけど、求めていたのはisaacのトーストでした。たまごとハムとキャベツとチーズがパンにはさまっていて、甘しょっぱくてあつあつで最高でした。場所はたぶん変わってないけど建物は変わっていて、店先には以前は無かった日本語のメニューがありました。
実は昨日の朝、明洞の両替屋さんに行き、その並びのお店のトーストを食べてあまりピンとこなかった、、、という経緯があり、やっと懐かしい味に出会えて嬉しかったです(でもどっちのトースト屋さんも日本人や中国人の長〜い行列ができていました)。

そしてトースト屋さんのすぐ近くにあるザハハディドの建築・デザインプラザを見に行きました。
ここは7年前にはちょうど工事中で、スタジアムかなにかを作っているのかな〜と思っていましたが、巨大なアートホールだそうです。でかくて変わった建物だけど、まわりのビルもわりと未来っぽいので、意外と街に溶け込んでいるような気がしました。ナムジュンパイクの展示をやっていたけど、朝早すぎて見られず、残念でした。

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それからホテルをチェックアウトして、現代美術館の裏手にある古い韓屋のゲストハウスというか民宿に移動して荷物を預け、雨がぱらついていたけど、今日一日は美術館めぐりにあてることにしました。

景福宮をはさんでZainxenoギャラリーと反対側にあるエリアは、現代美術館や、大企業が運営している大きなギャラリーが集まっている場所でした。質、量、ともにものすごかったです。KIAFで見たのよりももっと幅広く、ダークな作品や社会問題を扱った作品もたくさんありました。
美術館は順路の表示がないから自由に見られました。でも、街中あちこちに親切に日本語の案内書きがあるのに、現代美術関係の場所には全然ないのは残念でした。日本人観光客はあんなにいっぱいいるのに、みんな現代美術には興味ないんだろうなあ。

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現代美術館はアートウィークで無料。かなり大きなインスタレーションやメディアアートを展示していました。すぐ隣にあるアートソンジェセンターの展示も良かったです。

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ギャラリーは、行き当たりばったりにちょろっと歩いただけでも20箇所くらいは回れてしまう感じで(一応、無料配布のガイド雑誌を持ち歩いてましたが)、あまりにも多すぎてとても全部は回れないし、だいたいどこも階段があって何フロアか使って展示をしてるので、坂道と階段でへとへとになりました。古美術やデザインのギャラリーもあったけど現代美術のところが多くて、大好きなカプーアの個展も見れたし、Kumho Museumで見たMin Joung-Ki展がとくに印象に残りました。

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このあたりは、坂の両脇におしゃれなカフェや洋服屋さんもたくさんあって、もっと時間があればあちこちのぞいてみたかったです(洋服屋さんは派手な柄物が多くて、東京的なシックな感じよりもわたしは好きです)。
休憩に食べた韓国式のかき氷(流行ってるらしい)がやたらと美味しくて、わたしは冷たい食べ物がそれほど好きじゃないから避けてたんだけど、こんなことならもっと早く食べておけば良かったと後悔しました。

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景福宮の敷地内にある古宮博物館や市庁の近くの市立美術館はアートウィーク関係なしに無料でした。気前が良いなあー。。。

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古宮博物館の展示は本当に素敵で、宮殿にたくさん貴族が整列している様子を描いた屏風とか巻物、先日感激した王座の背景の山の絵(日月五峰図)など、じっくり見られました。日月五峰図は左右対称に山が五つ並んだ後ろに、左に月、右に赤い太陽が描かれていて、この月と太陽の表現は日本の富士参詣曼荼羅とよく似ていると思いました。
今日見たところはどこも、日本の美術館みたいなお客さんをたくさん集めるのを狙った企画という感じがなく、混雑もなくゆっくり見られました。無料だからかもしれないけど。

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夜はまたトーストが食べたくなってisaac(朝とは別の店舗)に行きました。誰も並んでなくてすぐ食べられましたが、なんとなく並んだほうが美味しい気がしました。いや美味しかったですけど。新大久保にも店舗があるらしいので、今度東京に出たら行ってみようっと。
街のあちこちにあるジューススタンドも、1500ウォンくらいで美味しい生フルーツのジュースが飲めて、とても気に入りました。いろいろ試したけどキウイジュースが好きだったな〜。
デザートに、屋台でフナ焼き(サクサクと軽くてあんこもそんなに甘くないタイ焼き的なおやつ)を買って食べました。1000ウォンで3個入りで、なかなかのボリュームでした。

***

日本のアートは韓国に負けている、それは国や企業の理解と支援が少ないからだ、という話をよく耳にするし、実際に見て、確かにそのとおりなのだろうと思いました。
でも、そもそもアートって個人的なものだと思うので、国別に対抗意識を持つことに意味があるのか疑問に感じてしまいます。
まわりの環境によって作風は変わるから、当然生まれ育った場所の影響は大きいし、国ごとに作品の傾向に特徴があるのも事実です。
だけど、わたしの作品の世界はわたしだけのものだし、ひとりひとりの作家がそれぞれ違う世界を持っているんだから、国とかの枠組みは関係ないんじゃないかと思います。
まあ、こういう個人プレー意識のせいで、支援が得にくいのかもしれないし、競争にも負けるのかもしれないけど。。。

韓国アート道中・4日目 イメージの強度

毎晩、社長さんがアートフェアの後にギャラリーに来て少しずつ展示の設営をしてくださっていました。自分でディスプレイするのと違って、空間の生かし方がとても面白いです。

本当は今日から個展の予定でしたが、フェアが終わってから本格的に始めるということで(日本では考えられないフレキシブルさ)、午前中はギャラリーに行って絵の続きを描いていました。
描いてる途中、まだ朝だったのに、ふらりとカップルのお客さんが入ってきて焦りました。でも二人でなにか話しながら楽しげにゆっくりとみてくださいました。
結局、韓国に来てから小さい作品を6枚仕上げて、どうにか格好がついたので残りの2枚はあきらめました。

午後から、コソクターミナルという駅で李奈珍さんと待ち合わせして、大きな画材屋さんに行きました。早めに着いたので駅のまわりの大きな地下商店街を探索しましたが、激安の衣料品のお店がずらりと並ぶ中、インテリア店が集まった一角があって、現代美術もどきとかゴッホもどきとか、安い絵(けっこう大きいのもある)が山積みになっていて、しかもバンバン売れていました。
李奈珍さんに聞くと、こういう絵はカフェとかお店のインテリアとして使われるそうで、出来のよくない絵のことを「コソクターミナルで売られている絵みたい」と言ったりするのだとのこと。
日本のお店だったら絵じゃなくてプリントのポスターとかが飾られている場合が多い気がします。たとえ安物でも韓国には絵を飾る文化があるんだなあと思いました。

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画材屋さんには、大容量のバケツ入りの絵の具とか、太いヘラみたいのとか、大きな作品用の画材がたくさんありました。それに張りキャンバスが安くていろんな形のがそろっていました。
悩みに悩んだあげく、キャンバスを20枚近く爆買いしてしまいました。これだけ描いたらまた個展ができるくらい笑。
それに葉っぱをたくさん漉き込んだ面白い韓紙も何枚か買いました。
店員さんも親切で、日本の絵の具はクサカベとホルベインのを置いていると言っていました。わたしはターナーのアクリルガッシュ一筋だから買わなかったですが。

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大荷物を抱えてギャラリーに戻り、李奈珍さんと絵についていろいろ話しました。体力があるうちに100号以上の絵を描いたほうがいい、大きな絵を描くとその前後で描き方が変わる、とか。
李奈珍さんはわたしより年下なのを気にして(韓国人は年上にとても気を使うらしい)わたしに対して敬語がうまく使えてないんじゃないかと言うんだけど、そんなこと全く気にしたことないし、同じアートラボ作家なんだから同じでいいのではと話しました(アートの世界では彼女のほうがずっと実績があるんだし)。だけど韓国の人たちがそんなふうに年齢を気にするのだとすれば、こちらからはいったいどうやって気を使えばいいのか(敬語どころか言葉が通じないのに)ものすごく難しいんじゃないかと思いました。

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夜は、明朝帰国する森下さんと菅間さんを囲んでギャラリーでパーティ。
韓国風中華料理(甘辛い味つけ)の出前をとって、成田で買ってきた久保田万寿で乾杯しました。森下さんたちが可愛いケーキを差し入れしてくださり、まるで誕生日会みたいに、ろうそくの火を吹き消しました^^
それから管間さんが作ってくださったアートラボの新しいHPを見ながら、他のアートラボ作家さんを社長さんに紹介したり、いろんな話をしながら、とても幸せな気持ちになりました。

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わたしは大学で美術史を専攻したとはいえ、実技教育はきちんと受けていないし、ヘタクソだし、自分の作品を分類するとすればアウトサイダーアートなんだろうなと思っています。
韓国は技術的にかなりうまい作家ばかりのような気がしたので、こうしてわたしが展示をさせてもらえているのがとても不思議だったのですが、「イメージの強度」はある、と言っていただけたので、そのことについてこれからよく考えてみようと思いました。

韓国アート道中・3日目 歴史のこと

午前中は、道ばたとか地下鉄の通路とかで買った珍しいお菓子や薬飯(甘くて超美味しい)、コンビニ海苔巻き(辛い)をつまみながらホテルで絵の続き。

午後から観光にでかけました。
7年前にはじめてソウルに来た時は、古いイメージをもっていたので、想像以上の大都会ぶりに、失礼ながらびっくりしましたが、今回はそのときよりももっと街に活気がある気がしました。
景福宮のまわりは韓国の伝統衣裳を着た観光客がいっぱいいて、とても華やかでした。
とくに、王座の後ろに飾ってある山の絵がとても素敵で感動しました。
その流れで景福宮の敷地内にある民族博物館を見学。民芸品、陶器、伝統の衣服や生活様式などの展示、昔の活字や、古い美術品、トーテムポールみたいなユニークな表情の木彫り、古い建物など。かなり興味深かったです。

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Zeinxenoギャラリーのある場所は、景福宮の西側、西村(ソチョン)というエリアで、表通りには食べ物屋さんやおしゃれな小さいお店やギャラリーがたくさんあって、裏路地をのぞけば古い家並みが見える、散歩するのがとても楽しいところでした。(帰国したあと実家に行ったら、ちょうど母がこの西村を舞台にした韓流ドラマを見てた笑)

夜はギャラリーの社長さんと李奈珍さんとサムギョプサル屋さんへ。
韓国と日本は歴史認識に違いがあるが、私たちはその中間で行きましょう、という話をしていただきました。
それで改めて思ったのは、その歴史についてほぼ何も知らないということ。
今の学生はどうだか知らないけど、わたしが学生のころは、朝鮮半島というと、馬韓辰韓弁韓・楽浪郡・高句麗・百済・新羅・渤海・高麗青磁・李成桂・訓民正音・活字の発明・両班・文禄慶長の役などの言葉を知っていればいいという感じでした。近現代史については、一応ひと通りは勉強したけど大学入試にあまり出なかったからちゃんと覚えていないし、大学生のときに朝鮮半島の美術について調べようと思っても資料をほとんど見つけられなかった記憶もあるし。。。
今はネットがあるから、検索すればすぐに、例えば今日見た景福宮も豊臣秀吉や日本軍に破壊されて再建されたものなのだということがわかって、複雑な気持ちになります。
でも過去に日本人が韓国だけでなくアジアの国々でやったひどいことにどう向き合うべきかは、よくわからないというのが正直なところです。

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韓国アート道中・2日目 KIAF見物

ちょっと寝て起きて、狭いホテルのベッドの上にトランクを乗せて机代わりにして、絵の続き。
日本から運んできた荷物のせいで腕が筋肉痛。。。

昼頃、地下鉄に乗って自力でKIAFの会場に行きました。
7年前にソウルに遊びに来たときは地下鉄の駅に英語や日本語の表示がなくて不便だったけど、今回はわかりやすい表示があって、ハングルが読めなくても迷うことはなく、街全体がぐっとフレンドリーな感じがしました。
昼ご飯は、社長さんに近所の食堂に連れて行っていただき、鯖と大根とキムチの鍋物をごちそうになりました。辛かったけど美味しかったです。^^会話ができなくてほぼ無言でしたが。昼間から鍋物食べるんだなあ。。。

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ブースにいても手持ち無沙汰だったので、午後はKIAFの会場をゆっくり見て回りました。
KIAFは全体的に作品のサイズが大きくて、写真ではわかりづらいけど、表面がレリーフみたいにデコボコした絵がたくさん目につきました。女性のヌードや、心の闇を丸出しにしたような病んだ作品は少なくて、画材とか素材とかと戦っている作品が多く、全体に力強く健康的な印象でした。
あと、丸い壷を描いた絵画が多かったのは、陶芸が韓国の誇る伝統芸術だからだそうです。
李奈珍さんによれば、ここ何年も作家の顔ぶれに変化がなく面白みがないということでしたが、そのぶん洗練されていて技術的なレベルがとても高かったです。

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夕方くらいに日本からアートラボトーキョーの森下さん&菅間さんが到着したので合流して、李奈珍さんにギャラリー近くの参鶏湯のお店に連れて行っていただきました。
参鶏湯はレトルトのしか食べたことがなかったので、本物は全くの別物で、優しい味で感動しました。中身の栗とかナツメとか朝鮮人参は、食べないのだそう(栗は甘くて美味しかったけど)。
李奈珍さんおすすめのチョンハというお酒もとても飲みやすかったし、生にんにくにコチュジャンをつけて食べるおつまみも恐る恐る試してみたらはまってしまいました。
参鶏湯の土鍋を斜めに傾けて(行儀の良くない食べ方だそう)お腹いっぱいに食べました。

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韓国アート道中・1日目 KIAF・VIPプレビュー

展示前はいつもそうなんだけど、出かける直前まで徹夜で絵を描いて、残り8枚の仕上げが終わらないまま大慌てで梱包して、大荷物を引きずって成田へ。朝9時発の飛行機に乗り込みました。
あたまがぼーっとしていたので、飛行機恐怖症は半分くらいですんだかも。。。
隣りの席に座っていた50代くらいの中国人のきれいな女性が、ふと気づくと下半身に服を着てなくて、薄い黒ストッキングの下にパンツが丸見えだったんですがあれは幻だったのでしょうか。
機内食は朝だというのにソースカツ丼(と、ごま豆腐とベルギーワッフルとコチュジャン)でした。コチュジャンの使い道がわからなくてごま豆腐にかけてみたけどあまり合わず、、、ソースカツ丼にかけるのが正解だったのかな???

昼頃に仁川空港に着いて、リムジンバスでソウル市内に向かいました。出迎えに来てくださった李奈珍さんがバス代も支払ってくださり、割り勘はしないで次の支払いのときに交替で払うのが韓国式だと教わりました。
これは一期一会式の考え方をする日本人的には戸惑う習慣だけど、このやり方に慣れた人にとっては割り勘ってかなり他人行儀な感じなのかもしれないなあと思いました。

Zeinxenoギャラリーは壁が高く広々として、天窓があって素敵な場所でした。
荷物を下ろして、まずは李奈珍さんの個展を鑑賞しました。作品の半分ほどはKIAFに搬入した後だったので全貌は見られませんでしたが、優しくて温かくて精巧でそれでいて力強くて、魅力的な展示でした。

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それからホテルに寄ってチェックインをすませました。ホテルは地下鉄の乙支路3街駅の近くで、部屋の広さ=バスルーム+ベッド、というとんでもなく狭い部屋だったけど、KIAFの会場のCOEXモールにもギャラリーにも乗り換えなしで行ける便利なところでした。

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そして、急いで地下鉄に乗りCOEXへ。KIAF(Korean International Art Fair)は、バーゼル香港に次いで、アジアでは2番目に大きなアートフェアだそうです。会場はものすごく広くて、各ギャラリーのブースはどこも大きく、作品も大きく、とにかく圧倒されました。
Zeinxenoギャラリーのブースは、絵画や彫刻など様々なジャンルの、比較的小さめな作品がぎっしりと展示されていて、お客さんも途切れず賑わっていました。

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12日はVIPプレビューだったので、終了後にZeinxenoの社長さんと副社長さんと李奈珍さんとVIPパーティに行き、ビュッフェ形式の食事をいただきました。韓国料理じゃなくて、主食はにぎり寿司でした。なにしろ徹夜なのであまり食べられなかったけど、カクテルがおいしかったです。李奈珍さんの通訳のおかげで、みなさんと楽しくお話できました。

海の不思議ないきもの展

きょうは台風一過でとても暑く夏らしい日になったので、ずっと楽しみにしていた、木暮奈津子さんの個展「海の不思議ないきもの」を見に、千葉県立美術館へ。
夏にぴったりの展覧会。広い展示室に、約1700点にのぼるというものすごい数のカラフルなオブジェたちがずらりと並んでいて、ただただ圧倒された。千葉ポートタワーや、観光船乗り場にも一部展示されていて、しかも同じ期間に松屋銀座でも展示されていたりして、いったいどれだけたくさん作品があるのかと。あの量、保管するだけでも相当大変なはず。。。
木暮さんの海のいきものたちは、どれもこれも変わったかたちだけど、不思議とグロテスクさは全くなくて、とぼけた明るさがあって、わたしは大好きなのです。

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千葉めぐり

きょうは、千葉公園に「大賀ハス」を見に行った。
大賀ハスというのは、千葉市内の遺跡で発見された2000年以上も昔の種から育てられた古代ハス。
JR千葉駅のすぐ裏にある千葉公園で、他の種類と交配しないように大事に栽培されていて、ちょうど今の季節が花の見頃。
人の顔くらいありそうな大きな花があちこちにぽこぽこと咲いていた。
梅雨どきだけど、きょうはすっきり晴れていて、ピンクの花がよく映えていた。
葉っぱはビロードみたいでしっとりしていて、風でゆれると水のしずくがキラキラしていた。
写真にはうまく写せなかったけど、葉っぱの背が高いところと低いところが波みたいにうねうねしていて面白かった。

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それから千葉みなとのポートタワーに行った。
子どものころに連れてきてもらったことがあるはずだけど、まったくおぼえていない。
今年でちょうど30周年だそうで、全面ガラス張りの建物はバブルの匂いがぷんぷんする。
上から見下ろすと地面に描かれているのが見えるカニのイラストも、80年代風で懐かしい感じ。
交通の便が悪くて行きづらいし、東京湾を見渡せると言ってもそんなに高いわけでもないし、いろいろ微妙。電波塔とかの機能があるわけでもなく、展望台がある以外なんの意味も無い、ただのタワーなんだそうだ。(当時、千葉県の人口が500万人を突破した記念に建てられたらしいけど)
でもそういうの嫌いじゃない。なんかアートみたいで。

アートフェア

きょうはアートフェア東京(ソウルオープンアートフェアと完全に日程がかぶっている)のプレビューに遊びに行きました。
アートラボトーキョーのブースはとても華やか。わたしは出展者ではないのでお気楽で、他のお客さんや作家さんたちといろいろおしゃべりできてとっても楽しかったのですが、、、やっぱりソウルに行くべきだったのかなー。。。

ソウルではどうやら作品が二つ売れたらしいです。写真を見るとシールがついてるのは「アマゾンソードの葉の下で(水槽の絵)」と「錦冠菊(花火の絵)」。どちらもとても気に入ってる作品なので嬉しい。けど寂しい。
もう二度と会えないのかなあ。ううう。達者で暮らせよ。。。
どこのどなたかわかりませんが、あの子たちをどうぞよろしくお願いします。
(↑↓この写真はぜんぶソウルオープンアートフェアのギャラリーZeinxenoのブースの様子です。)

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水 神秘のかたち展

きょうはサントリー美術館の「水 神秘のかたち」展を観に行った。
前からとても見てみたかった重要文化財の「日月山水図屏風」が出展されてたから、会期終了ギリギリに行けてよかったー!と、わくわくしながら会場を一周したんだけど、、、出口まで行ってもお目当ての絵がない。
最初まで戻ってもう一周してもやっぱり無いので、出展リストをよく読んだら、展示替えで後半は展示されてなかったらしい。
日月山水図屏風は、この展覧会のポスターとかチラシのメインビジュアルになっていて、チラシには展示替えの予定があることは小さく書いてあったけど、どの作品がとは書いてなくて、まさかメインの作品が展示されてないなんて思わなかったよ。。。
もーーーー、ほんっっっとにがっかりした!!!
水を描いた作品をあつめた展示で、「石山寺縁起絵巻」とか、他にも素敵な作品がたくさんあったし、もともと水の表現には興味があったから面白かった(石清水八幡宮のコーナーもあったし)。
だけどだけどさ、、、ほんとがっかりしたよ。。。