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メキシコ20世紀絵画展

梅雨が明けて、真っ昼間の砧公園は、緑がギラギラ。
きょうは占い師Sさんと、世田谷美術館「メキシコ20世紀絵画展」に行った。

フリーダ・カーロの「メダリオンをつけた自画像」が目玉。
小さい絵なのに、これが一番最初にぽつんと1点だけで展示されていた。
確かにほかの画家たちとは明らかに違う、なにか超越した感じがあった。

わたしのお目当ては、フリーダの夫、ディエゴ・リベラの「夜の風景」。
本物を見られるとは。絵の前でじーーーーーっと立ち尽くしてしまった。

昔、実家にあった美術書でよく眺めていて、すごく印象に残ってたのだけど、題名も、画家の名前も、描いたのがメキシコ人だということも知らなかった。
で、この展覧会のチラシに「夜の風景」の写真が載ってたのを見たときは、ええっ、これ描いたのってディエゴ・リベラだったのか!と、ヘレンケラーがウォーターと言った瞬間のように驚いてしまった。
リベラのほかの絵はMOMAとかで見たことあったのになー。

ほかは、メキシコ革命を描いた絵とか、力強いけど暗い絵ばかりで気が滅入った。そういえば昨日見たエリザベートの夫、フランツヨーゼフ1世の弟は、19世紀に銃殺されたメキシコ皇帝、マクシミリアン1世だったな。不幸だ。。。

ホセ・グァダルーペ・ポサダのイラストを集めた展示も面白かった。悪趣味なゴシップ記事とかに添えられた、なにやら不穏な挿絵。
素朴というのは違うけど、洗練されているわけでもなく、ただ凄みがある。モチーフは骸骨が多くて、これが人々に大人気だったそう。

かの地では生け贄の髑髏を祭壇に供えるというから自然に受け入れられるのかも。
日本の「新聞錦絵」の、いわゆる「血みどろ絵」を思い出した。
でも血みどろ絵ほど凄惨な雰囲気ではなく、もっとからりとしていたけど。
これがメキシコ絵画に影響を与えたのだそうだ。ふーん。

それからSさんと、夜までえんえんとおしゃべり。カウンセリングの勉強もしているとのことで、さすがの聞き上手。
いろいろ話してるうちに、次にやりたいこととかが、少し明確になった気がする。

また観ちゃったよ、エリザベート

宝塚月組「エリザベートー愛と死の輪舞ー」観劇。これで8回目だ。あほか。
一長一短あっても毎回それぞれ面白いのは、大変なことなのだろうし、あのコーラスの異様な不協和音に包まれる感覚はたまらんです。

今回のトートは、目立つ癖とかが少なくて、正統派といった感じだった。一幕終わりで銀橋に後ろ向きで座る姿が超麗しくて、後光が射してた。
エリザベートは、やたら走るのが速くて、手足が細くて長くて、夢も特技もないのにバイタリティだけはある、アンバランスな女。ひとりで生きていきたいし、周囲からも浮いてるのに、たまたま絶世の美女だったのが不幸のはじまり。

ふつうのミュージカルだったら、変わり者の元気な女の子があらわれたことで、まわりのみんなの心が解放されて、幸せになる話が王道だと思うのだけど、エリザベートの場合は、彼女がいようがいまいが、みんな不幸になっていく。
あれを観おわって、元気づけられるということもない。なのにまた観ちゃうのは、やっぱり異空間にトリップできるからなんだろうな。

あんなへんな話を、茶化したりせず正攻法でやれてしまうのは、さすが宝塚。
エリザベート観た翌日は、頭の中であの音楽がぐるぐる鳴りつづけるのだけど、「全ての不幸をここに始めよう、ハプスブルクの栄光の終焉~」なんてのがエンドレスで回ってると、ほんとに暗い気持ちになるよな。

村山知義と三匹の小熊さん/ZINE’S MATE THE TOKYO ART BOOK FAIR

きょうは、まず、渋谷の松濤美術館の近くにある、ギャラリーTOMへ。
展示していたのは、村山知義の絵本、紙芝居、それにアニメーション。「三匹の小熊さん」というキャラクターが登場する作品を集めた展示。

村山知義は、演劇とか舞台美術とか挿絵とかプロレタリア文学とか転向文学とか、いろんな分野で活躍した人なので、名前はなんとなく知っていたのだが、ちゃんとまとまった形でイラストの仕事を見たのははじめて。
プロレタリア文学なんていうとなんだか貧乏臭いイメージだけど、当時としては最先端のお洒落なものだったのかもしれないなあ。
それくらい、素朴なのに洗練されてて、媚びないのに可愛らしい絵だった。
でも少女趣味じゃない可愛さだから、知的で上品。

いまは日本中可愛いものが溢れてるけど、当時はさぞかし斬新だったことだろう。
絵本を見るかぎりでは、小難しいこと考えてる人にはとても思えない。
子どものため、子どものため、という説明文が、今見るとうるさい気もしたが、人々の意識が今とは違ったろうし、それくらいアピールする必要があったのかも。
で、またアニメがちょっと笑える感じで可愛いんだ。DVD買おうかとすごく迷ったけど、影響されそうだったのでやめた。
うーん、あんなにシンプルでもいいのかあ。。。

それから、寄り道しながら表参道までとことこ歩いて、だいぶ前に装幀のお仕事でお世話になったデザイナーさんが出展されてた、ZINE’S MATE THE TOKYO ART BOOK FAIRへ。
2カ所の会場はどちらも大盛況で、カッコいい本がところせましと並んでいた。
入り口でばったりR君に出くわしたのだが、混雑ですぐ見失ってしまった。

ノートにさらっと描いた落書きみたいな絵を、束にしてホチキスで留めたような、簡略な本というか冊子が多かった。ああいうの、流行ってるんですかね。
あれならわたしにもできるかな~って、ちょっと真似してみたくなっちゃった。
わたしが作ったらあんなふうにお洒落にはならないだろうけどさ。

それにしても本が好きな人ってたくさんいるんだなあ。
そして、カッコいいということは、果てしないことであるなあと思った。

EVIL DEAD THE MUSICAL ~死霊のはらわた~

サンシャイン劇場は駅から遠いし、行くたびに必ず迷う。
でも今日は案内所で道を聞いたからいつもほど猛ダッシュせずに済んだ。
で、「EVIL DEAD THE MUSICAL ~死霊のはらわた~」を観た。
映画の「死霊のはらわた」をもとにした、コメディミュージカル。舞台でホラーやっても笑っちゃうよね、というのを逆手に取る心意気は好きだ。わたしはホラー映画は怖くてダメだけど、これなら大丈夫かもと思って行った。

1幕は独特のハイテンションにまず戸惑い、慣れるのに時間がかかった。
歌詞が聞き取りづらかったけど、聞き取れなくて困るような話でもなかった。ホラー映画好きならいろいろ笑えるツボがあるんだろうが、まあしょうがない。
でも、2幕の最後のほうはなかなかカッコ良かった。みんな血糊でベタベタで。

楽屋落ちネタの連発や、ミュージカルをパロディにしてるのを強調してたのは、どこまでがオフ・ブロードウェイ版に基づいているのかなあ。
主役の諸星和己はへただったけど、しっかりスターのオーラが出てて、やっぱりダテに光GENJIやってなかったんだなあ…と思った。腕にチェーンソーくっつけてるのが異様に似合ってたし。あとは大和田美帆が良かった。

この森で、天使はバスを降りた

Aさんと「この森で、天使はバスを降りた」(シアタークリエ)を観た。
招待券をもらったので。クリエは初めてなのだが、観やすい劇場だった。

映画が原作で、NYテロ事件の直前からオフブロードウェイで上演され、かなりの人気を博した作品だそうな。ふーん。
登場人物は少ないが、台詞もほとんどぜんぶが歌で、いかにもミュージカル。
確かに音楽は良かったし、キャスティングが地味だったが、なかなか面白かった。

それにしても、アメリカ人じゃないと絶対に思いつかないストーリーだった。
さびれ果てた村に、天使のようなよそ者の女の子がやってきて、かたくなな人々の心をいやすという、まあ王道のパターンなのだけど、「いろいろ大変なことがあるし、ベトナム戦争でも失敗したが、きっとやり直せるさ、だってここにはふるさとの土地があるから!」っていう結論。

えええ、、、土地ですか。。。よくわからないが、アメリカ人はそういう感覚なのだろうか。つ、強いな。。。
「それじゃなにも解決してないだろう!」と言いたくなるのは日本人だからかなあ。
もっと悩んでくれないと納得できないというか、、細かいこと気にしすぎなのかな。
大地=母性、みたいなギリシャ神話的イメージみたいだけど、うーん、公式サイトに「女性のための物語」とあったわりには繊細さに欠けるような。

…というようなことを考えるのも楽しいもんです。

ミュージカル嫌いの人って、よく「突然歌いだすのがイヤ」とか言うんだけど、(わたしなんか、ふだんでも気づいたら歌ったり踊ったりしてることがあるけどね)たぶん台詞を歌で表現することよりも、歌うことでいろんな問題がうやむやになって、いつのまにかやたら前向きな結論が出がちなイメージがあるので、そういうミュージカル的な世界観そのものにアレルギーがあるんじゃないかと思う。

葛藤するシーンが省略されると物足りないのは好みの問題かもしれないがよくわかる。
でもそんな作品ばかりじゃないと思うけど。。。
それに実際に歌ってるうちにいろんなことがどうでもよくなることもあるし、芝居つきのコンサートだと思って気楽に観たらいいのにな。

ピクニック

素晴らしいお天気。きょうは、大鹿さんの声かけで、ピクニックに出かけた。

代々木公園は、ダンスや楽器の練習をする人、フリスビーや長なわとびをする人、水着姿でねそべってる人、とにかくいろんな人であふれかえっていた。
今度なにか練習したくなったら、代々木公園に行けばよいのだな。。。

わたしたちも、大きな木の下に陣取った。
日なたにいるとジリジリ暑いけど、日かげは涼しくてすごしやすかった。

お絵描き教室のお仲間の方々、大鹿さんが専門学校で教えてる生徒さんたち、0歳~4歳の子どもが7人、それにパパママたち、などの大所帯。
まずはみんなでお弁当。昨日は疲れてたけど、わたしもお弁当作って行きましたさ。(お弁当を作るところからが遠足ですからねー)

それから、赤ちゃんたちをモデルに、スケッチ大会。
動き回る子どもを描くのはほんとに難しくて、ほとんど手も足も出なかったけど、どの子もそれぞれの可愛さで面白かったし、のんびりしていい時間をすごせた。

お開きの後、公園で開かれてたジャマイカフェスをちらっと眺めた。おもしろそうだったが、あまりの混雑っぷりに早々に退散。

ママさんたちによれば、最近の赤ちゃんは圧倒的に女の子が多いんだそうな。
少子化のせいで自然にそうなってバランスをとっているらしいとのこと。
真偽のほどはわからないけど、不思議なもんですなあ。

日原鍾乳洞

よい天気だったので、ふと思い立ち、奥多摩の日原鍾乳洞に出かけた。
鍾乳洞をイメージした絵を描いてるのに、行ったことないのもなーと。(イメージはイメージだから、現実と違ってもかまわないのだが)

電車で奥多摩駅まで2時間くらい、それからバスで30分。都内とは思えない山奥。細い山道をぐねぐね行くバスで少し酔った。わたしは千葉の田舎育ちだけど、ここはもっと本格的に田舎だ。

バスの終点からまたとことこ30分ほど歩いて、鍾乳洞についた。
テレビとかで見る超キレイな鍾乳洞とは違って、鍾乳石とか石筍は少なく、石柱はほとんどなくて、岩をくだいたみたいな洞窟がずっと続いていた。
あちこち照明がついてたし、岩にへんな名前のプレートがついてたり、興ざめなところもあったが、もっと自然のままのとこだったら、わたしの運動神経ではとうてい無理だろうし、まあこんなもんかな。

取材のつもりでひとりで行ったけど、土曜日なのに観光客は少なくて、ときどき暗闇の中でひとりっきりになれたのが楽しかった。

ゆっくり見学するつもりだったが、時間的には1時間ほどで見終わった。
でも思ったより広くて、急な階段とか、高低差がかなりあって、くたびれた。
寒かったので上着を着ていたが、ぽたぽた降ってくる水滴でけっこう濡れた。

この上着も石灰岩化するだろうか。。。

奥多摩駅の観光案内所をのぞいたら、「奥多摩に住んでみませんか」というパンフレットが置いてあって、移住者の例として「画家、音楽家、イラストレーター、小説家等」とあった。

こ、これは、、、わたしにも移住する資格があるってことか?

それから、奥多摩のお隣の青梅市に住んでる専業主婦Oと待ち合わせ、立川中華街「龍福園」で夕ごはん。美味しくて満足。
窓から東京の西側の山影が見えて、夕日が沈んでいくのをずっと眺めていた。
聞けば友人Oはゴールデンウイークに福島の鍾乳洞に行って来たんだとか。
げげっ、いいないいな~。

その他、友人Oに聞いた話

  • 青梅市は地デジ圏外。都内なのに。
  • カラオケはルームチャージが無いので一人で行ったほうがたくさん歌えてお得

わたしは一人カラオケはやったことないな、、、お得なのか、そうか。。。

極小から無限大へ

きょうは、大鹿知子さんが参加されているグループ展を見に行った。(「0号」展 極小から無限大へ 両国・アートトレイスギャラリー)
0号サイズの小さなキャンバスや額に収められた作品がずらり。
大鹿さんは鉛筆画を出品されていて、久々に大鹿ワールドを堪能。
あとは、わたしは立体作品に興味をひかれた。

それから、上智大学教授・林道郎さんのレクチャー、「アーティストが知っておきたい諸々の現実的なこと」を聴く。
聴講者は、アーティスト、学生、ギャラリスト志望者などさまざま。とても興味深い話を聞くことができた。美術界の問題点というのは、現代社会全般に通じることのようだ。

そりゃそうだよな。通じてないはずはないよな。

ちょこっとトリップ

小淵沢にある、Sちゃんちの別荘に遊びに来た。
渋滞を避けるべく、2日の夜9時過ぎに出発。中央道はやっぱり少し混んでた(らしい)が、予定通り夜中に到着した。

いかにもなんかのミステリとかの殺人現場になりそうな、素敵な別荘。
翌日現地で合流の予定だった、Mちゃん夫妻とベイビーは、ベイビー発熱のため、Sちゃんの仕事仲間の方もインフルエンザ(新型ではない)で、こられなくなってしまったのは残念だった。
(こないだ出版社の方にもらった赤ちゃん用絵本をたくさん持ってきたのになー)

やはり高原なので東京よりは少しひんやりするけど、お天気はまずまず。
新緑に囲まれたテラスでのんびりしたり、Sちゃんの愛犬・ムーちゃんと遊んだり、ワインを飲みながら、Sちゃんのご両親の家庭菜園に立てる看板を合作したり。(わたしがアイデア+下描きをして、Sちゃんが着色を担当)

ワインは苦手と思ってたけど美味しいのを少しずつ飲めば大丈夫なんだな。
近所のホームセンターで買った、板きれと6色の絵の具で描いたわりには、すごく心根の良い人が描いたっぽい、なかなかポップで愛らしい看板に仕上がった。
たまにはこのくらい気楽に描くのもいいのかも。

Sちゃんがモロッコ旅行に行ってからすっかりハマって研究中という、タジン鍋をごちそうになった。まだ満足の出来ではないらしいが、美味しかった。

3日目は、別荘の近くの評判のレストランで、超美味しいドリアを食べてから、清里の清泉寮名物のソフトクリームを食べに行くことにしたが、付近は車で大混雑、それにソフトクリームをなめる老若男女があふれかえる異様な光景だった。売店にも長い行列でげっそりしたが、並んだかいのある美味しさで満足。

所々見える立派なこいのぼり、このあたりでは武田信玄の幟と並べて立てるようだ。

午後はまたテラスでまったりお茶を飲んだり、野鳥を眺めたり、縫い物をしたり…。

予定では6日に帰京のつもりだったけど、渋滞情報を検討した結果、5日の午前中に出発するのがよかろうということになった。
さすがに多少渋滞にもあったけど、3時間くらいで無事帰ってこられた。なんかほんとにゆっくりさせてもらった。たまにはこういうお休みもいいなー。

The Way I See

大学の同期、Ryu Itadani氏の個展のレセプションに顔を出した。(赤坂東急プラザ内、丸の内ギャラリー)

相変わらずかっこいいなあ。大きい絵も気持ちがいいなあ。
大きいと塗るのが大変って言ってたけど、そりゃそうだ。。。

赤い城 黒い砂

きょうは、松竹の舞台「赤い城 黒い砂」(マチネ、日生劇場)を見た。
シェイクスピアとジョン・フレッチャーの合作「二人の貴公子」の翻案。
個人的な感情が国とか巻き込んだ大戦争になっちゃうんだから大変な話だ。

いろんな見方ができる芝居で、面白かったといえば面白かったんだけど、、、当て書きなんだろうけど、中村獅童も片岡愛之助も、貴公子ではないのはいいとしても、ちょっとチンピラっぽかったというか。。。
あの二人に黒木メイサが惚れるとはちょっと思えなかったかも。。。

ラスト、二人が男同士の友情を超えた愛を確信して一緒に死んじゃってびっくり。メイサをおいてきぼりにして。うーん、歌舞伎役者だからいいのかなあ?

たぶん、命がけで戦うことこそが最も強烈な愛の表現である、したがって人間がいるかぎり戦いは無くならない、という話だったんだと思う。
それならできれば獅童VS愛之助の正面きっての決闘シーンも見たかったような。
王とは孤独な存在なので、共依存関係にある二人の男は王にはなれない。
だから一人残されたメイサが王座についた。という話だったのかな???

生きてくって大変だよね。。。

それから韓国みやげを背負って実家へ。
夕飯はたけのこごはん~
大雨の中、帰ったかいがあったというものだ。

お荷物人間の生きる道

朝、5時起きで、バタバタ着替えてタクシーで空港へ。
トイレの水が流れなくなったり、ドライヤーを壊したり、航空券の引き換え書がどこに行ったかわかんなくなって慌てたりしつつ。

ソウルに残るソンさんが、こんな朝っぱらからレジデンスまで見送りにきてくれた。
空港に着いたのは早すぎるくらいだったのだけど、ここからもう一騒動。前川さんが、レンタルした携帯をレジデンスに忘れてきてしまったのだった。

あとはまあ、手荷物検査でちょっと引っかかったりもしたけど、それくらいではもう動じない。早めに空港に着いてて良かったね、という感じ。
免税店でお買いものして、のり巻き食べて、飛行機に乗った。
景色が見たかったけど、韓国の上空はずっと雲に覆われていたし、雲はそのまま東京まで続いていた。

わたしと前川さんとは、とくいわざは違うが、弱点は意外と似ているらしく、生まれついてのトラブルメーカーというか、ようするに団体行動が苦手で、興味をひかれることがあると他のことを一切忘れてしまって、ミスをする。
わたしのほうがミスが多かったけど(すいません)。
したがって、ふたりでいてもほとんど助けあうことができない(笑)。
どうりでいままであまり二人きりにならなかったわけだ。

説教魔の前川さんが、わたしに説教したことがないのも同じ理由かもしれない。
もともとわたしはちゃらんぽらんなわりになぜか人に説教されることは少ないんだけど。(というか、なるべく怒られない方向を選んで生きてきた結果、今に至っている)
正直、4日も一緒にいたらケンカになるかもと懸念していたが、目の前の面白いことに夢中になっていたのが良かったのかもしれない。

前川さんのかたわらには不思議といつも、編集者とか、演出助手とか、舞台監督とか、やたらと面倒見のいい人が必ずいる。で、前川さんも、面倒見られることに慣れている。
これは前川さんが作家さんだからというより女優さんだからだろうと思っていたが、あの人は、生まれついてのお姫さまなんだな(それも大変だろうと思う)。
値切るのが苦手なのもむべなるかな。そう思って小説読むとより面白いかも。

わたしは、従者でも道化でもないし、お姫さまのサロンに出入りする絵描きってとこか。
お姫さまにしても絵描きにしても、役立たずは役立たず、お荷物といえばお荷物。

それでもふたりでいれば自然と役割分担ができるもので、何かしようと言い出すのは前川さんで、わたしはいいですねと同意する役なのだった。
まあ、挿絵描きってだいたいそんなような仕事だしなあ。

ひとりならひとりでも意外にやっていけるのだけどね。。。

今回お守りをしてくれたソンさんは、さぞかし大変だったことでしょうけど、、、
お荷物人間の生きる道は、ひたすら、とくいわざを磨くことしかないのだろう。
適材適所。そんなことを確認するような旅であった。

水の都ソウル

昨日とはうってかわって、ソウルは冷たい雨模様。
前川さんと、レジデンスの近くの市場でタコやイカの干物や、食材を買い込む。
ハンキロって、500gかと思ったら1kgのことだった。そうか、そうだな…。

それから東大門方面に出かけていき、トースト屋さんで朝食。
卵とハムとキャベツとピクルス入りで甘じょっぱくて、いろいろ美味しいもの食べたけどこれが一番気に入ったかも。

東大門の問屋ビルなどをうろうろして、ヒゲ坊主マネキンなどの写真を撮ってから、わたしはひとりで地下鉄に乗って北村の古い街並みを見に行った。
適当に歩いたが、わりとこぎれいで、ふつうに人が住んでる感じ。ギャラリーもいくつかあって、なかなか面白い展示をしていた。
駅で韓国の人に道を聞かれた(たぶん)のはちょっとうれしかったな。

それからレジデンスに戻り、前川さん、ソンさん、Oさんと合流して、グエムルファンの前川さんのたっての希望で、漢江上りの遊覧船に乗りにいく。

しかしこれが大変。地下鉄の駅から遊覧船乗り場が遠く、しかも川岸が工事中で、営業してるかどうかもよくわからないし、大雨で寒いし。
それでもあきらめずにぬかるみを歩いて乗り場に着いたら、なんと営業してた。
船を待つ間に、東南地方から修学旅行中の小学生が大騒ぎしながら集まってきた。
漢江の両岸はずうっと団地団地団地鉄橋団地団地鉄橋団地団地団地鉄橋団地団地…。

晴れてたら良かったのにな。でもソンさんの解説つきだったので面白かった。
船内では日本語の放送もあったのだけど全然気づかず。英語の放送はわかったのに。日本語と韓国語はやっぱり音の印象も似てるのかもしれないな。

終点はこれまた不便な場所で、えんえん歩いて五輪スタジアムなどを横切り、Mさんたちとの待ち合わせ場所に着いたときには全身びしょぬれだった。

前川さんたちは、映画監督のIさんに会いにいくことになっていたので、わたしは、Mさんたちと、舞台を見に行くことにした。
有名な「ナンタ」は、劇場が3つもあるのになんと全部売り切れだったので、「ナンタ」と同じ演出家の作品で、ソンさんもお薦めの「ジャンプ」を見た。
観光客ばっかりだったけど、実際、観光の途中に観るにはうってつけの作品で、ドリフとか吉本新喜劇をアクロバティックにしたような感じで面白かった。
劇場はそんなに大きくなくて、うしろの席でも十分に楽しめた。

しかしとにかくどこに行っても日本人だらけで、お店の人もこっちが口を開く前に日本語で話しかけてくるし、なんだか申し訳ないような気がするくらいだったけど、でもすごく気楽は気楽。
3日間で使った韓国語は、結局「アンニョンハセヨ」と「カムサハムニダ」だけ。
それもどうなんだろうかと思うけど。

Mさんたちと別れ、ふらふら歩きながら帰ろうとしたら、道に迷った。
でも、ひとりだったら誰に迷惑かけるわけでもないし、迷うのも楽しいものだ。
これでようやく地理関係がつかめてきたところで、明日は帰らなきゃいけない。
今回行けなかったとこもたくさんあるし、なにより食べ物がおいしいし、また遊びにきたいな。ソウルいいとこだ。

トラベルの語源はトラブル

きょうのソウルは暖かくてとてもよいお天気。
早起きして、実家に泊まっていたソンさんにむかえにきてもらい、大きな市場や、いろんな問屋街(日曜だから閉まってたけど)をひやかし、たまたま通りかかった普信閣で、伝統衣裳の派手な行列に遭遇したり、お粥を食べたり、菊茶を飲んだりしながら、鍾路の大きな本屋さんへ。

小説とかの装幀や、絵本や美術書、イラスト雑誌などを物色&買い込んだ。
街中の標識とかもそうだけど、漢字表記はほとんどなく、ハングルばかりだから、自力ではまったく何が書いてあるのかわからない。

知りたかったのは韓国のイラストレーションの傾向なのだけど、出版物のイラストは、わりと保守的というか、プロフェッショナルというか、丁寧に描き込まれた暖かみのある絵や、繊細な線のイラストが多い。不景気のせい?
なんというか日本的なファンシーさはなくて、手堅く大人っぽい印象。アニメ系のものを除けば、日本からより欧米からの影響が強そうだった。
ここに新参のイラストレーターが入り込むのはけっこうハードルが高そうだ。
ヘタウマ系とかアート系のお洒落な絵は、広告とかに使われることが多いみたい。
いずれにせよわたしの絵に似たのは全然みかけなかった(いいのか悪いのか)。

それから明洞に出て、化粧品屋さん(男性の韓流スターのポスターだらけ)を見たり、地下道の商店街を眺めたり。地上より地下のほうがキッチュで面白かった。
1日遅れで日本からきた、映画評論家のOさんMさんご夫妻&そのお母様と合流。
人ごみの中、うっかり迷子になったりしつつも、どうにか昼ご飯にありついた。なんかの麺と餃子で、とても美味しかったんだけどなんという名前だったか忘れた。
わたしは、韓国料理が辛いのは気候が寒いせいだろうと思っていたのだけど、これは間違いで、元々、辛い料理は韓国でも南のほうのものなのだそう。
そういえば北朝鮮の冷麺は辛くないし、ソウルの宮廷料理も辛くはなさそうだ。
辛い料理は暑い国のものなんだな。東南アジアの料理も辛いものね。

そのあと、大学や小劇場があつまる街、大学路へ。
あちこちに演劇のポスターが張られ、劇団員がチラシ配りをしている。
演劇のポスターのイラストの、なんかイマイチあか抜けない感じは日本と一緒だな。

写真の下段中央は「熱海殺人事件」のポスター。その右隣は「グリース」、その上は「イヨネスコフェスティバル」。イヨネスコ生誕100周年だそうな。へー…。
ソンさん曰く韓国の演劇はコメディ中心で、ワッと笑ってそのまま忘れる感じだそう。
ここでもうろうろしてる間にまた前川さんがいなくなっちゃったりもした。

そして仁寺洞の観光客向けお土産屋さん街に寄って(ここの記憶があいまい)から、南大門市場で銀食器やら韓国海苔やらお茶やら朝鮮人参やらをそれぞれ買い込んだ。
ずうっとソンさんに頼りっぱなしで、どこ歩いてたのかわかってなかったんだけど、あとで地図見たら、けっこう狭いエリアをぐるぐる回っていたんだな。

明洞で焼肉を食べて解散したのはもう真夜中。でもそれから前川さんとわたしは、汗蒸幕&ヨモギ蒸し&アカスリ&足ツボ&金箔パック&カッピングのコース。
裸で、おばちゃんたちに揉まれたりこすられたりしてると、心が無になりますなあ。
またわたしがロッカーの鍵をなくしたりと一騒動あったけど、疲れはとれた。
なんかちょっとぼったくられた気もするけどね。。。

レジデンスに戻って、こってり眠った。ふつうに観光した一日だった。

ソウル珍道中スタート

夕方、羽田空港の国際ターミナルに、前川さんと、世話役のソンさんと待ち合わせ、金浦行きのアシアナ航空に乗って、あっという間にソウルに着いた。これなら函館に行くのとそんなに変わらないなあ。。。
着いてから夕飯を食べようと言ってたのに、機内食でお腹がいっぱい。(機内食にもしっかりキムチとチューブ入りのコチュジャンがついてた。)

近すぎて外国に来たという感じがしないが、やっぱり興奮してたのか、いきなり、レンタルしたばかりの携帯電話の充電器を紛失した。がちょーん。
でも1万ウォン(780円くらい)の罰金ですみそうなので、気を取り直して街にくり出した。

東大門あたりの繁華街や、路地裏をうろうろ。ほんとに物価が安い。
ソンさんによれば、不景気で、土曜の夜なのに人が少なすぎる、ということだったが、真夜中すぎても屋台もデパートも営業中だし、ビルの電飾の色彩感覚が夢みたいだ。
春だからなのか、街じゅう、いたるところで工事中だったが、工事現場をかこむフェンスに描かれたイラストがかっこよかった。
それに、建築の曲線の使い方がなんとなく面白いなと思った。

写真はファッションビル(洋服問屋の見本市みたいになっている)のマネキン。すごい小顔で目が大きい。こんなようなのがずらりと並んでた。
服そのものは微妙なものが多かったけど、目利きの人が見れば掘り出し物がありそう。こういうとこで仕入れた服を、上野のアブアブとかで売ってるのかもね。買い付けするつもりで来たら相当楽しいんだろうなー。

トッポッキの鍋、春雨の腸詰めと焼酎で夕飯と言うか夜食。さすがに美味しかった。
宿泊は「レジデンス」という、ウィークリーマンションのようなところ。かなり安いんだけど、きれいだし、洗濯機やキッチンもついてて、ふつうに住めそう。
少し前川さんとおしゃべりして、結局眠ったのは朝の4時半くらいだった。